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REPORT

時の葬列~箱舟の章 Vol.3 3月21日 高円寺 HIGH

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80年代に勃興したポジティブパンクムーブメントで中心的役割を果たした AUTO-MOD の GENET が主宰するイベント「時の葬列」が21世紀に復活し、3回目となる「時の葬列~箱舟の章 Vol.3」がAUTO-MOD結成35周年記念イベントの第一弾として、高円寺HIGHにて開催された。

回を重ねるごとに注目度を上げていく「時の葬列」。特に今回はAUTO-MOD の結成35周年記念公演ということで、多くの期待が寄せられチケットは即ソールドアウトとなった。そしてもう一つの話題としては、Z.O.A の一夜限りの復活がある。長年復活はありえないといわれていたZ.O.Aだが、ヴォーカルのMORIKAWAいわく「GENET氏 に恩義を返すためにやる」と復活を決断したという。それも中期~後期メンバーによる「BURMMA」以降の再現ライブをおこなうということだ。そんな話を耳にすると、改めてAUTO-MOD の影響力の凄さを思い知らされるのである。

会場周辺にはオープン前から続々と黒ずくめの衣装に身を包んだオーディエンス、(チケットを手に入れられなかった当日券を求める人たちの姿も多々見られる)が集結し、それはまるで80年代当時を思わせる風景のようでもあった。

オープンした会場では、DJとして参加している MADAME EDWARDA の Zin-François Angélique が エレポップ、ニューウェイヴ&インダストリアル等、ダークウェイヴな選曲で会場を「時の葬列」という異空間に染め上げている。聞くところによると Zin-François Angélique は今回 DJ をするにあたって各バンドと綿密な選曲の打ち合わせをおこなったとのことだ。

イベントのオープニングを飾るのは アンダーグラウンドながら80年代の映画界に衝撃を与えた作品「鉄男」の音楽を担当した石川忠率いる 元祖インダストリアルバンド DER EISENROST である。

廃墟を思わせる鉄材を中心として構築されたメタルパーカッションのセットが配置され、異様な雰囲気を醸し出している。定刻を10分ほど過ぎた頃、メンバーが姿を表し、インプロビゼーション的に各々が音を重ね合わせ「 Barrel」でライブはスタート。張り詰める静寂を破壊するかのようなヘヴィーなグルーヴと、ステージ両脇から繰り出されるメタルパーカッションのジャンク音が炸裂していく。繰り返し反復される耳を劈く金属音と、それを繰り出す圧巻のパフォーマンスが一気にオーディエンスをステージに釘付けにしていく。

続く「Sort of foods」、「D’s freaks lab」ではドス黒い冷ややかなグルーヴがうねり、規則的に鳴り響く不吉な金属音が、聴く者のダウナー感を増幅させ、
スペーシーなSEから、不協和音的に掛け合いながらパーカッションが組み上げていく「Mix-j」、工事現場さながらのマシンノイズを思わせる重厚な音作りの「Wirered」と披露していくことで、彼らは着実にバンドの世界観をステージに表現していく。

その後、意外にも JOY DIVISION のカバー曲「Ceremony」を披露する。 ポップでメロディアスながら、JOY DIVISION 特有な陰鬱を帯びたこの曲を、メタルパーカッションでコーティングすることで、ある種独特な雰囲気に仕上げている。カバーといえども一筋縄でいかないところが素晴らしい。

そして「 Move on」では狂ったようにハードコアばりの叫びと、突き進むマシンビートを繰り出し、カバー曲による先ほどまでの和んだ空気を一転させる。そんなステージでは石川忠が”高速切断機”を持ち出し金属を引き裂き火花をステージに撒き散らかす。会場中に焦げ臭い匂いが漂い、ボルテージが最高潮の中、最後の曲「 Isolation」を激しいパフォーマンスと共に見せつけ、圧倒的、唯一無二のステージを終わらせたのだった。

DER EISENROST
01. Barrel
02. Sort of foods
03. D’s freaks lab
04. Mix-j
05. Wirered
06. Ceremony(JOY DIVISION,Neworder カバー)
07. Move on
08. Isolation

続く2番手は今回のイベントの目玉ともいうべきZ.O.Aだ。

いったいこの日をどれだけ待ち続けただろうか。いや、ファンの多くは叶わぬ夢として待つことさえもせず、ただ夢想していただけだったように思う。しかし、2か月前に行われたイベント「UGX. undergroundExtra 2015」でそれは突然告知された。当日配布されたモノクロのフライヤーには、大きく描かれた懐かしいZ.O.Aのロゴと「3.21 “時の葬列” Z.O.A」の文字。これが何を意味するのか、理解するのに少し時間が掛かってしまうほどだった。

ステージに設置されたスクリーンに浮かび上がるロゴとお馴染みのSE。それだけでフロアのテンションは無上に。「Burmma」のときのメンバーがそこにいる。上半身裸のMORIKAWAは煩悩を剥ぎ取ってまるで何かの覚悟を決めているかの様だ。

PAZZのカウントから「Europe」がスタート。ミッドテンポなのに疾走感があり、ストレートさも複雑さも備えている、代表曲のひとつ。音に身を委ねているいまこのときが信じられない。次はイントロを取り払ったライブ仕様の「Close Rerations」。後半の感動的な流れを経て、間髪入れずに「Over The Trap」へ。トランス期の曲だが、いわゆる中期の頃のアレンジが本当にカッコいい。そしてこちらもライブ仕様のショートな「Breaking Bou」。ここまで一気に畳み上げる。

ひとつひとつ正確にリフを刻むKUROKI。長いブランクがあったのにも拘わらず、複雑で激しい曲達を何事もなかったかのように次々とこなしていく。こちらも長らくブランクがあったというSHINOHARAは、ダブルネックのベースを駆使する。はじめはとても緊張しているように見えたものの、ステージが進むに連れかつてのドライブ感をすぐに取り戻す。先日のDOOMにも参加した“復活屋”PAZZ。Z.O.Aには多くのドラマーが入れ替わり参加したが、この現役感は今日のライブに相応しかったように感じる。MORIKAWAは唄だけでなく全身全霊でZ.O.Aを表現する。このライブはかつてのあの頃を切り取ったものなのかも知れないが、しかし今日の彼には血と雫を含めたその後の歴史をフィードバックさせた「いま」を感じる。

ほんの少しのブレークを挟んですぐに「Return Of The Serpent」。和音階っぽいリフと正にZ.O.Aらしい展開。元曲とは違うPAZZのアレンジが興味深い。さらに、激しさもメランコリックさもある「Persecution Maniac」へ。次第にMORIKAWAはシャウトオンリーになっていく。この曲はこんなに美しかったっだろうか? そしてラスト、「Sad Song」で終了。あっという間に、夢は終わった。

在りし日のZ.O.Aに満たされつつも、でも欲を言えばこの頃のあの曲やこの曲ももっと聴きたかったし、違う時代の曲も聴きたいと率直に思った人はきっと多い筈だ。Z.O.Aが過去に残した作品群はいまも宝石のように輝いているけれど、でもやっぱりZ.O.Aはライブが素晴らしい。(記憶が正しければ)過去の何かのインタビューにおける「CDは下書き、ライブが清書」という意味のMORIKAWAの発言を思い出した。

Z.O.A
SE
01. Europe(BURMMA/1989)
02. Close Rerations(BURMMA/1989)
03. Over The Trap(HUMANICAL GARDEN/1988)
04. Breaking Bou (BURMMA/1989)
05. Return Of The Serpent(Confusion in Normality/1991)
06. Persecution Maniac(BURMMA/1989)
07. Sad Song(ロッキンF誌 1991年2月号付録)

イベント3番手はポジティブパンクのカリスマ ZAZIE 率いる SODOM 改めTHE SODOM PROJECT。

光ひとつない暗闇の中、不穏なSEと、時折焚かれるストロボの白い発光が会場の緊張感を高めていく。不意に電子音が鳴り響き、4つ打ちのビートが鼓動のように会場を揺らし始めると、いつの間にかステージにメンバーが。1曲目「YELLOW DUST」でスモークに包まれ、サイレンと共に叫ぶ ZAZIE のシルエットが浮かび上がる。薄暗いステージで、ZAZIEはクールにダークなダンスビートに合わせ踊り、低音のヴォイスで歌っていく。さながらクラブで踊り狂う傍観者のクラバーのように。

2曲目は叩きつけるようなドラムとZAZIEの叫び声から始まる「TV MURDER」。”これぞトランス時代のSODOM” ともいうべき当時を代表する一曲だ。オーディエンスは歓喜の声を上げ、共に反復されるビートに身を委ねている。続く「ETERNITY」、エレクトロニックボディーミュージックとバンドサウンドが見事に融合した「EXPOSED TO CRISIS」と ZAZIE はずっと軽やかにステップを踏んでる。

そして続けざまに、インダストリアル調の反復するハンマービートに粘りつくようなヴォーカルが絡みつく「 MERCENARY MUST DIE」、ずっしりと地を這うようなベースから早い展開の「CARICATURE」とダンサンブルながらも多彩な曲でステージを構成していく。

最後は暗闇から一転、赤い照明に包まれたステージに、荘厳なストリングスが。メロディアスな「THE END OF THE WORLD」だ。気怠く歌うZAZIE 。そして曲の終わりに繋げるように「MATERIAL FLOWER」の硬質なイントロが流れ出すと会場から歓声が上がる。しかしそこはやはりSODOMというべきだろう、あっさりイントロだけでステージそのものを終了させてしまうのであった。

こう言うと語弊が生じるかもしれないが、裏切りは SODOM の常套手段である。そんな SODOM に翻弄され魅了されてきたのも事実である。ハードコアからインダストリアル、そしてダンサンブルなハウスサウンドへと、カメレオンのごとく時代によって姿を変えてきた彼らの今回のステージには、次の裏切りを含ませた何かが垣間見えた気がする。

THE SODOM PROJECT
01. YELLOW DUST
02. TV MURDER
03. ETERNITY
04. EXPOSED TO CRISIS
05. MERCENARY MUST DIE
06. CARICATURE
07. THE END OF THE WORLD

このイベントの最後を飾るのは、35年という長きに渡りゴス界の帝王に降臨する GENET 率いるAUTO-MOD である。

ステージではパフォーマーのTAIZOが「蘇る暗黒の光、さあ、時間よ甦れ、無き者たちの声を聞き、そして今蘇りし時の葬列に震えるがよい!」という開幕のコールを高らかに告げ、イベントのタイトルにもなっている名曲「時の葬列で」ライブはスタートした。退廃的な演舞のようなステージング、激しいバンドサウンドに狂おしく絡みつくサックスが心地よく響き渡る。今回のライブはゲストにサックスが参加しており楽曲に彩りを加えている。

続く「Merry go-round」では、少女を思わせるパフォーマーが迷い子のように時計を抱えて登場し、ステージ上を彷徨い歩く。止まっていた時間が再びゆっくりと動ききだすかのように。

MCで GENET は「時の葬列へようこそ!こんな馬鹿なことを35年も続けてしまいました。」と告げ 2ndアルバムの表題曲「DEATHTOPIA」を。ステージには2人のパフォーマーが登場し GENET を交えて短剣を振り回すアングラな見世物小屋のようなパフォマンスを繰り広げる。

曲が終わると終焉へと向かう時を刻む時計の音が鳴り響き、パフォーマー2人が寸劇を繰り広げる。そして2人が囁く最後の言葉「さようなら」に被せるように GENET も「さようなら」と不敵に囁くと「Good bye」のフェティッシュで倒錯した世界が繰り広げられる。

「Out Of Darkness」、「 Mind Suicide」と暗黒舞踏会は続き、「Belzebuth」では GENET がバイブルに火をつけるパフォーマンスを。狂おしく泣き叫ぶギターの音色で始まる「禁_呪」では白いドレス纏った仮面の少女を絡め歌い踊るステージングを見せ、最後はこの日に最も相応しい葬送曲「Requiem」を披露し、今後語られるべき伝説ともなるゴシックオペラの舞台はフィナーレを迎えた。

AUTO-MOD
01. 時の葬列
02. Merry go-round
03. Deathtopia
04. Good bye
05. Out Of Darkness
06. Mind Suicide
07. Belzebuth
08. 禁_呪
09. Requiem

TEXT = R HIRAKAWA ( Z.O.A / Haruo Shiomi)PHOTO = K FUJISAWA / thanks : yas

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