6月1日にセカンドアルバム「Intuitionistic logic」をリリースした『 vez 』のボーカル高木フトシがアルバムの全貌を語る。
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L : アルバム「Heaven flower」についてお聞かせ下さい。
T : ”Fall silent”を作って、これでイケるとなり、じゃあアルバムを作ろうってなった時に、既にHeaven flowerの形がある程度見えていたわけ。オレは「Heaven flower」 の曲に関してはライブに重点を置いてたんだよね。いかにライブでそれを表現し、共有して楽しめるか。だからそれを踏まえた楽曲を選曲して、そこにアサキチが持って来た曲を入れて、意味もオレなりに”悲観”とか”深刻”とかそういうのを入れつつ、ヴォリュームを作って、ファーストアルバムって形にした。本当にライブに向かってる感じがするし、そういう意味でも凄くピュアじゃん。オレら4人のスキルとか、過去それぞれやって来たこととかが一切匂わないアルバムだし。今きちんと音楽を作っている証明が出来た感じ。
L : 「vez」としての存在証明的なアルバムが出来たわけですね。
T : そうだね。純粋無垢って訳ではないけど純度の高い音楽が出来たと思う。今更だけど、みんなにはもっとあのアルバムを宣伝して欲しいと思っている。そして聴いてほしい。当時はぜんぜん思っていなかったけど(笑)。オレは毎回作品を作るたびに思うんだけど「これがみんなに伝わらなかったら、しょうがねーな」って、それはモノを作り終わった時の大事な思いの一つでもあって「Heaven flower」はそういう風に思えたからね。
L : 「Heaven flower」は今回の「Intuitionistic logic」とは対局に在るように思うのですが?
T : そうだね、2枚目だから対局じゃないと駄目。同じものを作る理由をあまり感じてない。だけど「vez」の作品としての統一感は大事だと思うわけ。
今回の作品は、オレ的に凄く進化したと思っているんだよね。だけど確かに「Heaven flower」の流れでは無いな。それはそうだよ、だって、捨てないとね。オレはつくづく40歳を過ぎてから思うんだけど、人間は失わないと駄目なんだよ。失ったって失った分得るものがあるから。失うことを怖がるほどカッコ悪いことは無いよね。そうすると「Heaven flower」と同じにはならないよ。でも今回の”Neon”は、オレの中では意外と”Black sheep”なんだけどね。コード感とか途中のAORなアレンジとか。凄く”Black sheep”っぽい。
L : それではニューアルバムの「Intuitionistic logic」についてお話を伺います。
T : 去年「Heaven flower」ツアーが成功に終わり、これはもう一回、早めにツアー行かないとマズいよねって話になり、来年の6月からまたツアーに行くことが決まったんだ。でも曲がまったく無い状態だったんでツアーに行くとしたら音源作らないとだめじゃんって。で、レーベルを含めていろいろ腹を割って話しをして、新たに全7曲でミニアルバムという形でリリースすることが決まった。で、その前にシングルを発売するから10曲作って合わせてアルバムって形にしようって。そして全曲を通し、アートワークも含めて一個のテーマを決めれば、後のミーティングでどんな意見が出ようが変更しようがないと。それで制作に入ったんだ。
L : 曲は「Heaven flower」ツアー以降に作り始めたわけですね。
T : “the beautiful sky”の詩を書いた段階で思っていたことでもあるんだけど、数学と物理と惑星の配列から始まるオレ達の分質すべての元素のへの思いっていうか。
L : “the beautiful sky”が今回のアルバム「Intuitionistic logic」の切っ掛けになったわけですね?
T : そうかな。”the beautiful sky”はツアー中に作っていたんだけど、詩を書いてる段階で構想はあったんだよ。いわいる「青い空は青い空」っていうだけでいんだよってこと。それが「青い空は繋がっているから、オレとオマエは繋がっている」っていうから変な誤解とかが生まれるんだよね。そうじゃなくて、ただオマエが見た青い空と、オレが今見ている青い空は「同じ美しい青い空」ってだけでいいじゃんかっていうこと。そう思ったところから今回のアルバムは始まったんだよね。そしてそれが全部惑星の配列からっていうところにシフトしていったんだ。すべては「1+1=2」だから。「1+1=3」じゃないから。それで宇宙全体の元素の物質からこれだけの物を作り出している人間の想像力の凄さに気がついたほうがいい。目に見えないモノよりも、今現在目に見えて分かっていることを。それをみんなが知ることで世の中が変わって行く気がするし。
L : それは現状を認識しろということですか?
T : そういうことなのかな。物事を誰かのせいにしたりすることに意味は無いじゃん。
L : そして”the beautiful sky”が出来て”Array of planet”が出来たというわけですね。
T : “Array of planet”からは、もう本当に数学と物理をめちゃめちゃ勉強して…(笑)
L : 「Heaven flower」はライブ見れば納得出来るような全体を通してすごくイメージしやすいアルバムでしたが「Intuitionistic logic」はタイトルが発表されて「?」となった人も多いと思うんですが?
T : さんざん言われたよ分かんねーって。メンバーも笑ってたから。スタッフにも「今回トラップが半端ないっす」って言われて…まあ確かにそうなんだけど 、みんなを嵌めてる部分があるんだよね。その分かんないをどんどん引き出したいというか。分かんないままの人は分かんないままだけど、勉強した人は分かるじゃん。分かった人はなにかを起こせるかもしれないし。もちろん起こせない、起こさない人もいるし。それはすべて「1+1=2」だから。俺はどちらかといえば「1+1=3」でもあるっていう考えの人間だったんだよね。でも違うって思って。答えばっかりを求めるんじゃなくて、何と何を足したのか?引いたのか?掛けたのか?のほうが大事なんだよね。そんな当たり前のことに気付いてなかった。
L : 「Intuitionistic logic」のキーワードは「1+1=2」というわけですね。
T : そうだね。そういった生き方をして初めて目に見えるモノ、目に見えないモノを選択出来るじゃん。でも人はそのチョイスをするときに自分の考えと違うほうをディスるんだよね。
L : 自分の考えにそぐわない人達のことをですね。
T : 自分の持つ宗教と違うもの、自分が支持する政党と違うものに対して支持する人のことを。だから価値観がそういう所まで広がって行く話でもある。この「1+1=2」って話からは。
L : 今回は深いですね。
T : 深いっていうか孤独だよ。馬鹿だから。でも単純なんだよ「1+1=2」だから。
L : 音楽は単純ではないですよね?
T : 単純でいいのよ。基本的にオレは音楽は人を騙すように出来ているって思ってるから。例えば、インタビューで「今回のアルバムはものすごく緻密に計算し、オレらのテクニックを屈指してレコーディングして作り上げ、高木フトシが今までのさらに上を行く詩を唄っています。」って…そうするとファンは絶対に感動するじゃん。それ違うからね。オレら好きなことをやってるだけだから。やりたかったからやってんだよ。だけどそこに付随する何かが付いてくるし。しまいにはミュージシャン本人が、なんかけっこう上積みするじゃん。ビジネス的な部分を含めて。でもビジネス的な部分がなくても音楽っていい意味で騙すように出来てんだって。
L : ミュージシャンはある意味偶像ですからね。
T : それは100%仕方がないんだろうけど。音楽が人を騙すというのは、「音楽は幸せでもないのに、人を幸せだと思わせることができるから」そしてそれは音楽のいいところだと思っている。
L : 騙すことがいいことですか?
T : 人を騙すんじゃなくて、幸せでもないのに幸せだと錯覚させる瞬間があるということ。それこそが音楽の醍醐味だと思うんだよね。ただそれが人間力をもって本当に人を騙す方向に行っちゃうとつまらないモノになる。プラスアルファーだけど。「1+1=2」じゃない人達にかぎって、そういうことをすんだよね。某人達とかさ…おかしいじゃん。あれ音楽じゃないし。でも世の中的には音楽ってとられている訳でしょ。
L : それは違う意味で騙されることに幸せを感じている人もいるのではないでしょうか?
T : オレからすれば騙しすぎなんだよ。あくまで音楽で音を鳴らして幸せだと思わせる瞬間を作り上げるのがミュージシャンであって、それ以外のことを作り上げるのは違うと思う。そんなことは絶対続かないからさ。現実、続いてないように見える。で、俺もまたそうやって「違う」ものをディスる。予定調和にもほどがあるっていうか、、、ね。だから、そんなんはもう嫌だったからさ。