LOADING

Type to search

FEATURE

6月1日にセカンドアルバム「Intuitionistic logic」をリリースした『 vez 』のボーカル高木フトシがアルバムの全貌を語る。

Share

L : 3曲目の”Algebra”について

T ; 代数学。

L : 数の代わりに文字を用いて方程式の解放を研究する学問ってことですよね。

T : うん。人間社会そのものがそうだよねっていう。オレらは数字で管理されてるわけだし、代数で生活している部分があるじゃん。だからクビになったりしたり、別れたりもするじゃん。

L : でも数字で割り切れない部分てありますよね?

T : それは「1+1=3」だから割り切れないと、本人だけが思っている。切ったほうは割り切っているよ。でもそれが代数っていう。これも詩を読んでもらえれば分かると思う。この曲は代わるってことがテーマ。君に代わってとか…あくまで瞑想と妄想。オレの詩はメンドクサイよね。まぁ、これが「理解されない君の言うロジック、不可解な瞑想」ってやつ(笑)。この詩の中の[cha]とか”Algebra”というキーワードをネットで調べてもらうと、さらに面白いと思う。”Array of planet”の[uud]と[udd]とかも。

L : 聴いた人は必ず調べたほうが良いということですか?

T : 気になるんだったらね。オレに「わかんねー!」って言うんだったら調べたら良いと思う。もう一つの楽しみとして。なんか、すでに数学ではないし。

L : それが先ほど言っていた”トラップ”ですか?

T : そうかな。いや、罠ってわけじゃないから。でも、そういうことなのかな。

L : 4曲目の”E”について

T : これはまさしくエネルギーの”E”。アインシュタインの[E=mc²]のそれ。2つのアトムというのと、原発について。トムヨークとフリーの「Atoms For Peace」ってあるじゃん。あれ聴いた時、日本人としてなんかスゲー恥ずかしかったんだよ。それがなんかすげー悔しかったんだよね。

L : 5曲目の”Broken symmetry”について

T : 素粒子の本のなかで、「対称性の破れ」っていう論文集が出てきて。南部さんっていう凄い人がいて。自発的対称性の破れって話も歌になると思ったんだよね。人間の個性も物質と同じで安定を探してるだけのような気がして。

L : この曲は、個性に対しての問題提起的な曲なのですか?

T : 問題提起というかそのまんまじゃないかな。インターネットもしかり。”Broken symmetry”の 『you can not be fixed』、「合わせようとするのは君は既にむりだよ」と言うことを叫んでんだけど。でも曲がニルヴァーナだからさ(笑)オレの嫌み的なところは多分にあるよね。皮肉というか。別にオレが何かをわかってるとかっていう意味の皮肉ではなくて、壊れているものを壊れているって叫んでいるだけ。だからそれを直す必要、直そうとする奴も嫌いだし。それを正しい風に言う人も嫌いだし。ヘイトだよね。アサキチもたぶんオレのそういうのを求めていたと思うしね。

L : 6曲目の”Molecules to separate”

T : 分離する分子ということ。これもさっき言ったFixの粒子論と同じ話。深い意味はそんなにないんだよね。だから全部数学的物理的に詩を書きたかったわけよ。人の心の琴線に触れるような感じには、どうしてもしたくなかった。

L : それは言葉すら数字的に表現できるからという意味ですか?

T : う~ん、楽しめるはずなんだよね。オレが今ここで言っちゃうと、その答えがバレちゃうから楽しめなかったりもするし。というのも含めてトラップが多いということなのかな。オレの中では明確な詩の答えはあるよ。それを言っちゃうと意味が無いというか…言ったら言ったで「ヘーそうなんですね、フトシさん物知りですね」じゃん?ま、単純に答えは最後の「杼」で出してるので。

L : 7曲目の「杼」について

さっきも言ったけど志村ふくみさんの考え方っていうか。

L : なにかを感じたら志村ふくみさんを調べてくれと言うことですか?

T : 調べてくれっていうか調べてもしょうがないんだよな、志村ふくみさんに関しては。凄い人なんだよ。色に関して命を頂くって考え方なの。それに対してオレの思った答えは、何回も、何度でも何度でも寄り添うしかできないじゃん。愛が答えではないので。もう、間違っても間違っても、寄り添い合うことでしかオレらは生きて行けないじゃん。それを学んだ。志村ふくみさんから。

L : このアルバムは志村ふくみさんありきのアルバムなんですね。

T : 俺にとってはそういっても過言ではない。というか、すごく感銘を受けたから。

L : このアルバムを理解するには志村さんを理解しなくてはならないですか?

T : そこは違う。音楽だから。別にどうでもいい。理解しなくていいし。このアルバムはロジックが先にあったのよ、オレのテーマが。最初の数学的物理的なモノだけでモノを作ってみたい的な。でも答えがなかったのよ…

L : 数学的なものを作ろうとして答えが出なかったんですね?

T : そう。纏まらなかったの。そこで出会ったのが志村ふくみさんだった。出会ったていうか、たまたまTVで見ただけだけど。小説とかエッセイとか何冊か書いているので、それを読ませて頂いて、もうさらに感動しちゃってさ。なんか人間力っていうのかな。それまでは、例えばネイティブインディアンの話とか聞いて感動するじゃんオレらは。そういうのだったんだけど、そういうのさえ、もう志村ふくみさんは超えてたっていうか。オレの中で。しかも同じ日本人で人間国宝で。そんで、人間ありきの数学やら物理やらに結局立ち返ったという。でも、自分のいらないものを削ぎ落として行く作業は数学的に物理的に見て考えて行動すると凄い楽しくなるし、楽なんだ。それが収穫だった。デザインの善し悪しも黄金比と言えばそれまでだけど、ビックバンから地球、タンパク質、x 、yって感じで紐解いていくとさ、なんか壮大じゃん。で、引き離されていく運命のなかで寄り添いあうことだけしかないよなって。思ったんだ。まぁ、全て「的」って話だけどね。「わからない」と「答えがない」というのも数学だし。